マーケティング論(4)

ビジネス戦略の基本的視座とブランドの販売戦略の俯瞰

ビジネス戦略の基本フレーム

最もシンプルなビジネスの筋道は「売上を分解する」と見えてきます。

売上は頭数、頻度、量の変数の掛け算で、<売上=頭数×頻度×量>と表すことができます。売上を上げるには、この3つの変数のどれかを上げるしか方法はありません。

具体的に、コンビニの売上を事例に考えてみましょう。一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会のデータによれば、2018年のコンビニエンスストア1店舗1日の平均売上は538,901円でした。客単価は629円。売上から来店客数で割り戻すと来店客が856人となります。コンビニの売上は来店客数 × 客単価ですが、実は来店客数は慎重に考えなければなりません。たとえば、コンビニに1日2回行く人がいると、頭数は1人なのに来店客数だと2人とカウントされてしまうからです。ゆえに来店客数=(頭数 × 頻度)と捉え直すことができます。仮に来店客数の1割がリピーターと仮定すると、来店頭数は779人。内77人が複数回訪れていると計算できます。こう分解すると打ち手が見えてくるから不思議です。頭数を上げるか、頻度を高め、リピーターを増やすか、客単価を高めるか、という筋道から売上を考えるようになります。実はビジネスの基本戦略はシンプルで、頭数、頻度、量の3つのボタンのどれを上げるか、を考えることなのです。

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では、皆さんがコンビニの店長になったとして、日販を60万円に引きあげたいと考えたとします。どこの変数を増やすことで、売上をあげますか?頭数?頻度?量?

さあ、考えてみましょう。

実際のコンビニ施策と戦略の関係

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実際にコンビニで行われるキャンペーンやサービスは毎週の如く変化しますね。頭数の戦略、頻度の戦略、量の戦略ごとに、実際行われている様々な施策を整理整頓してみました。すると上記のような表におさまります。これらの具体策を帰納法的に考え、重要な法則性を見出してみましょうか。

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頭数の戦略というのは、広告が代表的な施策ですが、これは広く告知し、新規のお客様を増やすことが主眼に置かれます。コラボレーション商品は、コラボするコンテンツのファンがターゲットです。例えば、セブンイレブンでワンピースの映画とのコラボレーションキャンペーンを行っていたとすれば、セブンイレブンはワンピースの何千万人というファンを対象に、普段こないお客様の来店を期待していると言えるでしょう。その他ATMや宅配業務の代替業務を請け負うのは、他の業態店舗にいくお客様を近くて便利だからを理由に店舗に誘引するためとも取れますね。

次は頻度の戦略を見ましょう。頻度の特徴は、何度も来店させる仕掛けを顧客の身近なものに潜ませるのがポイントです。例えば、ポイントカード。大きさを考えてみましょう。銀行のクレジットカードと同じ大きさですよね?なぜか。それは常に肌身離さず持っている「財布」のなかに仕込ませるためです。一方、最近ではアプリが流行っていますが、このアプリも肌見放さないスマートフォンに忍ばせることによって、プッシュ型で情報提供できるようにするためです。ローソンがよくやっているシールを集めて、必ずお皿やカバンがもらえるマイレージキャンペーンもありますが、来店を習慣化させる施策であり、これは再来店を促す仕掛けなのですね。

最後に量の戦略です。この共通点は「店内でもう1品買わせる工夫」といえます。客単価を上げるには実質、店舗の買うものを増やすしかありません。そこで平均単価629円を見通して、700円をくじ引きの条件にしているのであり、平均単価を知っているからこそ、もう1品購入させるギリギリの価格に設定しているのです。この辺り、数字と施策と戦略を重ね合わせると、仕掛ける側の「意図」がはっきりと見えてきます。

 

セールスブレイクダウンのフレームワーク

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さて、皆さんに課題を出すフレームワークの説明に入ります。売上は頭数、頻度、量の3つに分かれる。これはいいですね。次、頭数はターゲット論と結びつけて考えると、「新規ユーザー」を獲得する戦略です。一方で、頻度と量は「既存ユーザー」のセールスベースを引き上げる戦略です。新規ユーザーによってもたらされる売り上げを「プラスオンセールス」、一方既存ユーザーによって支えられている売り上げを「ベースセールス」と言います。上記のフレームで黄色い部分が頭数の戦略領域で、新規ユーザーを獲得するためのプロモーション施策を「ブランドプロモーション」と言います。商品やサービスの印象をTVCMなどの広告で表現し、広く認知・理解を図るのです。一方で、緑の領域が既存ユーザーのベースアップを図るもので、顧客との関係性を深くしていくエンゲージメント・プロモーションが展開されます。黄色と緑の領域はターゲットも戦略も違いますので、ここを注意してください。最後のピンクの領域は販促を行う「セールス・プロモーション」です。店頭で売り上げを作るために仕掛ける施策で、ここはターゲット関係なく、全てのお客様に展開していきます。

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では、具体的にdocomoのプロモーションとターゲットを仮説で書き記してみました。新規ターゲットが2つ。既存ファンを2つ。それぞれでやはりプロモーションが違いますね。docomoの場合、新規はTVCMで最近では、高校生の青春をWEBでじっくり見るショートムービーや5Gをテーマにしたものが積極的に放映されています。 

一方、エンゲージメント領域では、dポイントユーザーが既存顧客ですから、ポインコのTVCMやdポイントの訴求も積極的に行われています。

ただ、TVCMをみているだけでは、この区別はなかなか意識しにくいですが、戦略眼であらゆるものを見ると、展開されている施策の意図が見えてくるようになります。ぜひ、あらゆるものを3つの戦略視点で捉え、ビジネス眼を鍛えましょ。 

 

課題:選択したテーマの商品・サービスをセールスブレイクダウンのフレームワークで分析しよう

 選択した商品やサービスをセールスブレイクダウンのフレームワークで分析し、どのような売り上げ構造になっているかを表しなさい。manabaのレポートにフレームワークのファイルをアップしておきますので、ダウンロードし、そこに書き込んでアップしてください。

締め切り:2021年5月8日20:00

それでは、頑張って。楽しみにしています。